剣道に必須の心構え「残心」の考え方と動きを詳しく解説!

残心

日本において武道は、単なる勝ち負けではなく精神や心といったものを重要視しています。オリンピックなどのスポーツは、ルールにのっとり勝ち負けを決めるものですが、時に日本人として勝負や審判の判断において納得がいかないといった精神性が気になることがあるでしょう。
 
スポーツの中では、技が決まり勝者が決まったところですぐにこぶしを突き上げる、ガッツポーズをとることが当たり前のようになっています。しかし、柔道などで日本人の選手は勝っても奢ることなく相手に礼を示しているのを見ると「美しい」と思うのではないでしょうか。一般に、こうした所作を残心と呼んでいます。今回は、残心、とくに武道の中でも剣道における残心について説明していきます。
 

剣道における残心とは

残心とは、礼に始まり礼に終わる武道において最後まで気を抜かないことを言います。とくに剣道においては、打突が決まり竹刀が当たった後も気を抜かず警戒を怠らない気構えを示すこととされています。さきにオリンピックなどスポーツの例を出しましたが、剣道に置いて一本が決まった直後にガッツポーズをとったりすることは礼に欠けた行為とみなされ、一本を取り消されることがあります。
 
一本が決まった後には残心という所作が必要とされているのです。勝ち負けに一喜一憂するのではなく、勝っても負けても相手に礼を欠かさないこと、相手の反撃に備えることです。剣道ではありえませんが、戦では必ずしも一対一とは限りません。敵を倒した後も周囲に対して気を配る必要があります。これを表した状態が残心です。
 

残心の他にもまだある!剣道で使われる心の言葉

剣道には、残心のような心構えに関する「心」が入った用語が沢山あります。これらの言葉の意味を知ることで、より残心について理解が深まるので順にみていきましょう。
 

無心

無心(むしん)は日常的にも使われているので何となく理解していると思います。「無心に勉強する」「無心になって素振りをする」というような使われ方をします。こだわりも悩みもなく頭で考えない心の状態を無心と呼びます。
 

止心

止心(ししん)とは、何か気がかりなことがあるために他のことに注意がいかず失敗してしまうことを言います。たとえば小手が上手な相手に対して、小手が来るものとばかり竹刀の先端に注意がいってしまい、全体の動きを見失って面や胴を食らってしまうというケースがこれに当たります。
 

会心

会心(かいしん)とは自分の考え、気持ちと同じように期待通りの動きをすることを言います。会心の一撃というのは、思い通りに技が決まった満足できる一撃のことです。
 

平常心、不動心

平常心(へいじょうしん)とは、思いがけない事態においても通常と同じ(平常)状態を保って対応できることを言います。不動心(ふどうしん)とは文字の通り、動じない心、乱されない心、つまり落ち着きということで、平常心よりもより強い精神・意思をもっている状態です。
 

剣心一如

剣心一如(けんしんいちにょ)とは正しく稽古を重ねることで剣の道が開き、同時に人の心も磨かれ正しい心をもつという意味です。「剣は人なり、剣は心なり」と言われています。全日本剣道連盟による剣道の理念として「剣道は剣の理法の修錬による人間形成の道である」と掲げられています。剣心一如に通じる理念です。
 

剣道での具体的な残心の所作とは

残心という心(気持ち)の状態は理解できたとして、では具体的に試合中にどのような所作(行動)をとるべきなのか説明していきましょう。
 
まず一般的な技の決まり方として面打ち、胴打ちをした時には打ちぬいた状態で相手の脇をすり抜けていきます。この時、背後からの攻撃に対して素早く竹刀を相手に向け正対し距離を置おいて中段の構えに移動します。この時に、相手の反撃がないことが確認できるまで周囲に対して注意を配し構えを維持しましょう。
 
打ち込んだ際に一本が決まっていたとしても反撃があるものとしてすぐさま反転して反撃を許さないこと、この気の張った状態を維持することで「残心がある」とされます。
 
ところで、残心という言葉は「心を残すこと」と書いてあり余力を残して打突することと取れます。しかし、全力で心を残さず打つことで気力がみなぎり、打突のあとも油断のない気迫(心)が残ることについて、これも残心と言われているのです。
 
剣道では、段を上がれば上がるほど残心などの心や精神性、つまり「気・剣・体」の心を宿すことが求められます。剣心一如、修練を重ねることで会得を重ねていきましょう。
 

まとめ

剣道は、小手先の動きではなく剣を通して人間性を鍛えていく道です。勝つためには体の鍛錬と、何度も何度も素振りを行うことで会心の動きを身に着けて行く必要があるでしょう。残心について説明してきましたが、単に頭だけで理解するものではなく修練を通じてその都度その都度理解が変わってくる、深化していくものです。ぜひ、自分の中で見いだせるまで稽古を重ねてください。
 
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